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東京高等裁判所 昭和53年(行コ)85号 判決

東京都杉並区荻窪三丁目七番二三号三〇二

控訴人

日下正一

東京都杉並区天沼三丁目一九番一四号

被控訴人

荻窪税務署長

瀧口良光

東京都千代田区霞が関一丁目一番一号

被控訴人

奥野誠亮

被控訴人ら指定代理人

石川善則

吉俣与喜男

主文

本件控訴を棄却する。

控訴費用は控訴人の負担とする。

事実

控訴人は、「一 原判決を取り消す。二 被控訴人荻窪税務署長が控訴人の昭和四八年分所得税について昭和四九年四月三〇日付でした更正処分を取り消す。三 (本位的請求)被控訴人荻窪税務署長が控訴人の昭和四八年分所得税について昭和五〇年七月三〇日付でした再更正及び過少申告加算税の賦課決定は無効であることを確認する。(予備的請求)右本位的請求にかかる再更正及び過少申告加算税の賦課決定を取り消す。四 (本位的請求)被控訴人荻窪税務署長が昭和五〇年五月三一日付でした控訴人の昭和四八年分所得税にかかる更正の請求に対する更正すべき理由がない旨の通知は無効であることを確認する。(予備的請求)右本位的請求にかかる更正すべき理由がない旨の通知を取り消す。五 被控訴人国は控訴人に対し、金四万二七〇〇円及びこれに対する昭和四九年三月一六日から支払済みまで年七分三厘の割合による金員を支払え。六 訴訟費用は第一、二審とも被控訴人らの負担とする。」との判決を求め、被控訴人ら代理人は主文同旨の判決を求めた。

当事者双双の主張及び証拠関係は、次のとおり付加するほか、原判決事実摘示のとおりであるからこれを引用する。

(主張)

控訴人

1  本件通知はその手続及び理由に重大かつ明白な瑕疵があり、無効少なくとも取り消されるべきである。

2  およそ異議申立て又は審査請求は、当該処分庁に反省の機会を与えたるために行うものであることが行政不服審査制度の立法趣旨であるところ、被控訴人荻窪税務署長(以下「被控訴人署長」という。)は、控訴人の更正の請求に対して単に「現在係争中であるため。」との理由をあげただけであるから、自省の機会(権利)を放棄したものと解され、控訴人は異議申立て又は審査請求を経ることなく本件通知の取消しを求める訴えを提起することができる。

二 被控訴人署長

控訴人の右主張は争う。被控訴人署長が自省の機会(権利)を放棄したことはない。

(証拠関係)

一  控訴人

甲第六三、第六四号証の各一、二、第六五号証の一ないし七、第六六号証の一、二、第六七ないし七一号証、第七二号証のないし三、第七三、第七四号証の各一、二、第七五号証、第七六号証の一、二、第七七ないし八二号証、第八三ないし八五号証の各一、二、第八六号、第八七号証、第八八号証の一、二、第八九ないし九一号証、第九二号証の一ないし八、第九三号証の一、二、

控訴人本人(当審)

乙第一二、第一三号証の成立は不知

二  被控訴人ら

乙第一二、第一三号証

甲第六五号証の一ないし七、第六六号証の一、二の成立は不知、その余の前掲甲号各証の成立は認める。

理由

当裁判所は、控訴人の被控訴人署長に対する訴えのうち、本件更正の取消しを求める訴え、本件再更正等の無効確認を求める訴え及び本件通知の取消を求める訴はいずれも不適法な訴えであるから却下すべきであり、控訴人の被控訴人署長に対するその余の請求及び被控訴人国に対する請求はいずれも理由がないから棄却すべきであると判断する。その理由は、次のとおり付加・訂正するほか、原判決の理由に説示するところと同一であるから、これを引用する。控訴人の当審における主張、提出・援用する証拠も前記判断を左右するには足らない。

1  原判決二三枚目裏一行目の「号証、」の下に「乙第一二、第一三号証」を加え、同三行目の「後期」を「原・当審・但し後記」と改め、二八枚目表九行目、二九枚目表一一行目、三〇枚目裏八行目の「原告本人尋問の結果」又は「同尋問の結果」の下に「(原・当審)」を加える。

2  控訴人は、被控訴人署長は本件通知により当該処分庁として反省すべき機会(権利)を放棄したと主張するが、これを認めるに足る証拠はないから、控訴人の本件通知の取消しの訴えは適法である旨の主張は、その前提を欠き失当である。

以上の次第で、本件控訴は理由がないから棄却すべく、訴訟費用の負担につき行訴法七条、民訴法九五条、八九条を適用して、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 田中永司 裁判官 宮崎啓一 裁判官 岩井康倶)

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